のろいのじてんしゃ
猪鹿おいさんの通勤コースは、家を出て公園のそばをとおり、決して接点の無い東大付属中学の門の対面を加速して、ほんでつぶれたスナックの前で最速に達し、そのまんまの流れで山の手どうりを横切り、カニ道楽の下を指をくわえながら通過、あたらない宝くじやの前を横切り、ほんで居酒屋を横目で見ながら会社に到着という、〆て15分のエクササイズコースである。
ここんとこ、毎日、とある地点で不思議な現象が起こる。その地点とはつぶれたスナックの前。
おいさんのチャリは三年前にドンキホー○たらいう量販店で、6,000 円も出して購入した一人乗り、前カゴつき、荷台無しのバリバリの新車。毎朝、自宅から会社までペダルをゴキゴキこいで通勤している。ブレーキも体が前にひっくり返るくらいよく効くし、サドルも盗まれて無いし、ペダルもちゃんと二つある、おいさんにとっては大事な大事な、マイチャリ。
それが、その地点を通ると、二日に一回位のペースでそれが起こる。
いきなりペダルがかるくなり、足が空を切る。そう、チェーンがはずれてしまうんだ。
位置的にはほとんどずれないほど正確に発生してしまう。この一ヶ月の間に何回チェーンを駆け直したことかわからない。近頃では、10秒もかからず駆け直しが出来るほど上手になった。何事も無かったように、サッっと、当たり前のように済ませて、さらっと走り始める。通りがかりの人が見ても、ふん、なに、こん、かっこいいおいさんは、っちいうくらいにしかわからんと思う。
とはいえ、朝の10秒のロスは昼間の一時間に匹敵するほど大きく、(ほんとかどうか知らない)朝八時の事務所一番乗りを目指しているおいさんにとっては、非常に大きな問題。なんで外れるのか、おいさんは検証を始めることにした。過去仕事で流用したことのあるうろ覚えの実験計画法を適用してみようっち考えた。
実験一日目) 何をしようかっち考えている間にスナック前を通り過ぎてしまい、やられる
実験二日目) 出発前にチャリのタイヤに空気を足す、なんだか、良く跳ねる感じ。。
スナックを通り過ぎる直前やられた。 ポイントが手前にずれた。
これは!!ピンときた。
実験三日目) 空気を抜く。抜きすぎて、乗れんごとなった。時間も無く、バスで移動。。
実験不成立。
実験四日目) 気を取り直し、つぶれたスナック前の、カビの生えたアジの干物のそばで、呪文を唱える
また外れた。
実験五日目) 思いっきりスピード出してスナック通過時間を減らしてみる。
ペダルのそばの大きいスプロケットのほうまで思いっきり外れた。
実験六日目) ルート変更して車道を走る。うん、外れない。よしっ!
軽自動車のおばさんからクラクション鳴らされた。ふん。。
実験七日目) ゆっくり走ってもやられた。
どうも、条件がそろったようだ、壮大な実験?から、傾向がでた。。。存外奥が深い。。空気圧、つぶれたスナック、くさった干物、進行方向、おれだけ、、。。これは俺への挑戦か、チャリへののろいか。。。おはらいでもしなくっちゃっと、思ってた矢先の朝通勤時、つぶれたスナックの前に人が、、こりゃぶつかる、、これものろいの一種か、、とこぐのをやめ、ブレーキをかけてよけた。
あれ、チェーンがはずれん、むむ、、そうや、ペダルをこがなきゃいいんや、やっと気がついた。長い道のりだったが、やっとわかったぞ。こがなきゃ外れることもないんや。でもそれじゃ会社に行き着かんから、この地点だけこがなきゃいいんや。学習能力が極端に弱っているおいさんの結論は、原因は不明だが、対応策は出た、
【つぶれたスナックの前では、ペダルをこがない】
ただし、真の原因は不明なので、まだまだ調査の網は緩めるつもりは毛頭無いが、外れなくなったんで、原因の追求も出来んごとなった。
ま、、いいか。。