おさるさん

早いもんでもう弥生三月。今月になって急に風が冷たくなったという奇妙な天気で、お天道様もあたふたしている。近所のどら猫どもにも恋の季節が到来したようで、夜な夜なごろにゃーとうるさい。ペットとしての猫は扱いやすいが、ドラはなんともすさまじいもんだ、もっともそれが自然なんだけどね。

この二月の間の約一ヶ月、上海からかみさんの友人がうちに遊びに来ていた。この人、(女性)なかなか面白い、いろんな経験をしている人で、今回はその人から思わず笑ってしまうけど、ちょっと悲しい話を聞いた。世の中いろいろあるもんで、当事者には申し訳なくちょっと不遜ではあるけれど、どう表現していいかわからない忘れられない話。

中国では最近、ペットブームで大型犬から鳥、へびまでありとあらゆる動物がペットとして飼われている。所得もあがったのだろうし、一人っ子政策で寂しいのかもしれないし、兎に角すごいらしい。特に犬の需要は高く又値段も高く、購入したら翌日に病気で死んだなどといういかにも中国らしいオチのある話もあるが、上海ではかなりのペットが売られ、又飼われているらしい。

この友人女性のダンナの友人もご他聞にもれずペットを飼っているそうで、その友人はなんと、猿を飼っていたそうである。それが相当にかわいく、しぐさが面白いので、ぜひ見に来いと言われて行く日を楽しみにしてたらしい。ところがとある朝その友人から連絡があり、実はペットの猿が急に死んだ、だから見れない、と涙ながらに電話があったらしい。

どうも真相はこういうことらしい。

その猿が急逝するニ、三日前にその友人のところに田舎の知り合いからたくさんジャガイモが送られてきた。これは最高っと、みんなで即たべることにし、水道でジャブジャブ洗って土を落とし、で電子レンジで『ちん』して、ホクホクのジャガイモにバターを乗せて、むしゃむしゃとみんなで、、もちろん猿にもあげて、がっついたとのこと。量が多く、とても一回では食べきれず、又の楽しみに取っておいた。そして事件の一日前にその友人夫婦は用事で家を空けた。

猿はつながれているわけではなく、しつけも行き届いており、家の中で放し飼い状態。とても頭のいい猿で、教えたことは即覚えまねをするらしく、そのしぐさがかわいいということで相当にかわいがられていたのだが、いつもの様に真似をした。あのおいしかったジャガイモをたべよう、、まずジャガイモを水道であらわなきゃ、、っとジャブジャブ洗ったようだ。流しが土だらけだったとのこと。次にバターを冷蔵庫からだして準備をして、、で電子レンジにいれて、、『ちん』っとすれば食えると、スイッチを入れるべくコンセントを差し込んだらしい。

中国では電源電圧が安定してなく、差し込んだままの状態では稀に電気用品を壊すことがあるので、冷蔵庫以外、ほとんどの製品は使用時以外はコンセントから引き抜いておくとのこと。で、コンセントをさしこんだ、、っと、その瞬間にビりっと感電して倒れた、、というのが事実のようで、もう一方の手にはジャガイモに塗る予定のバターまでしっかり握られていたそうだ。なんともかわいそうな話だ。

ジャガイモを毛むくじゃらの手で水洗いした時に、そのままの濡れた手の状態で水を滴らせた状態のまんまだったのだからたまらない。友人夫婦が外出から帰ってくるとコンセントの前で猿君がのびていたとのことである。

とてもかわいそうな話であるが、聞いた時はじめは、思わず噴出してしまった。その友人のダンナも思わず笑ってしまったそうであるが、落ち着いて考えると全くかわいそうな話なのだ。人間の真似をしたのが命取りとなった。

かわいいペットは家族同然、棺に入れる時にジャガイモとバターを入れてあげたそうだ。今頃天国でおなか一杯食っていることだろうな。

猿君に合掌。もう人真似はせんで、猿らしくな。。。